妊娠中の歯科治療でのよくある質問や注意点についてお答えします!【レントゲンや麻酔など】
こんにちは!雲仙市国見町の徳永歯科医院です!
今回は妊娠中の歯科治療におけるよくある質問や注意点について説明していきます。
妊娠中の歯科治療は、ご自身のお身体や赤ちゃんへの影響が心配になるかと思います。
しかし、妊娠中であっても若干の制限はありますが歯科治療は可能です。
なので、痛い、腫れたなどの症状がある場合などはおひとりで我慢されずに、歯科医院の方へ遠慮なくご相談ください。
今回は下のように妊婦さんの歯科治療についてよくある質問と注意点をまとめました。
- 歯科治療は可能?治療できる時期は?
- レントゲンは大丈夫?
- 麻酔は大丈夫?
- 飲み薬は飲んでも大丈夫?
- 仰臥位低血圧症候群について
- 妊娠性歯肉炎とむし歯のリスクが上がる
今回はこれらをそれぞれ解説していきます。
目次
歯科治療は可能?治療できる時期は?
妊娠中も歯科治療は可能です。
特に状態が安定してくる妊娠中期(妊娠16週〜27週)には、ほぼ通常どおりの歯科治療を受けることができます。
この時期であれば、局所麻酔を使ったむし歯の治療や抜歯も行うことができます。
また、妊娠初期や妊娠後期の場合でも、体調を見ながらですが簡単なむし歯の治療や歯石取り(クリーニング)などは可能です。
ただ、妊娠中はどの時期であってもホワイトニングはNGとされています。
それはホワイトニング薬剤の胎児への安全性が確立されていないからです。
また、インプラント治療もおすすめできません。
インプラント治療は外科処置であるのに加えて治療期間も半年〜1年程度と長期間の通院となります。
妊娠中は普段よりも体力を消耗しやすい状態なので身体的負担になるのと、出産時期やその後の育児もあるので通院が滞り治療中断になる可能性も高いことから妊娠中のインプラント治療はおすすめではないのです。
レントゲンは大丈夫?
妊娠中に一定以上の量の放射線を浴びると胎児が奇形になったり精神発達遅滞などの障害が出るというデータもあるため、妊婦さんからすると歯医者でのレントゲンも不安に感じる方もいるかと思います。
しかし結論から申し上げると、妊娠中の歯科用レントゲンは胎児には特に悪影響はありません。
胎児の成長や発達に影響を及ぼす放射線量は100mSv以上と言われています。
一方で、歯科用レントゲンの放射線量は0.01mSv〜0.03mSv程度であり、そもそも放射線が当たる部位も顎や顔面なので腹部とはだいぶ離れた位置になります。
なので、歯科用レントゲンは胎児に影響を与えることはないと考えられています。
麻酔は大丈夫?
妊娠中に歯科の局所麻酔は特に問題なく使用できます。
局所麻酔はその部位で分解されるので、妊婦さんの胎盤を通じて麻酔が胎児に到達するといったことはありません。
歯科の局所麻酔は胎児に悪影響を及ぼすことはないのですが、局所麻酔を使った治療は母体の状態が安定している妊娠中期(妊娠16週〜27週)が望ましいとされています。
また、麻酔の成分の影響というより緊張することで体調が悪くなることもあるので、体調を見ながら無理なく進めていくようにしています。
飲み薬は大丈夫?
妊娠中はなるべくお薬を処方しないようにしますが、痛みや腫れが強いことで母体に悪影響が出る場合には、胎児への影響が少ない痛み止めや抗生剤を飲んでいただく場合もあります。
痛み止めはカロナールが第一選択になります。
カロナールは赤ちゃんでも飲むことができる安全性の高いお薬です。
抗生剤はセフェム系、ペニシリン系が第一選択になります。
痛み止めや抗生剤の飲み薬が胎児に影響を及ぼすのは妊娠4週~10週と言われています。
しかし、上記の種類のお薬はこの時期(妊娠4週〜10週)であっても胎児に対する安全性は高いとされているので、炎症の状態によっては内服していただく場合もあります。
仰臥位低血圧症候群
妊婦さんが妊娠後期のときに仰向けに寝ると体調が悪くなることがあります。
これを仰臥位低血圧症候群と言います。
具体的な症状としては下のような症状が現れます。
- 顔面蒼白
- めまい
- 意識が薄れていくような感覚
- 吐き気
- 冷や汗
- 呼吸がしづらいなど
仰臥位低血圧症候群が起きる原因についても説明します。
仰向けに寝ることで、母体の下腹部付近にある下大静脈の上に胎児が乗っかり血管を圧迫します。
圧迫された下大静脈の血流が低下してしまい、母体の心臓に血液が戻りにくくなってしまいます。
そうすると、心臓から全身に送る血液が少なくなるので血圧が低下し、体が酸素不足に陥ります。
その結果、「仰臥位低血圧症候群」になるのです。
仰臥位低血圧症候群の症状が出た時の対策についても説明します。
もしも体調が悪くなったら、左を下にして寝るようにしていただきます。
なぜかというと、圧迫されている下大静脈は体の右側にあるので、左を向くことで下大静脈への圧迫が弱くなり下大静脈を通る血液が流れやすくなります。
下大静脈から心臓へ送られる血液の量が元に戻ると、心臓から全身へ送る血液の量も元に戻り体調も回復しやすくなります。
ということで、仰臥位低血圧症候群が起きたときには、左を下にして寝てもらって安静にしていただくことで対応いたします。
妊娠性歯肉炎とむし歯のリスクが上がる
妊娠性歯肉炎とは、妊娠中の女性特有の歯肉炎です。
妊娠性歯肉炎になることでお腹の中の赤ちゃんへの影響も出てきます。
それは、低体重児および早産の可能性です。
妊娠性歯肉炎にかかっている人はかかってない人と比べて7倍も低体重児や早産の可能性が高くなります。
妊娠中はこの妊娠性歯肉炎とむし歯のリスクが大きくなります。
その主な原因は下のようになります。
- 女性ホルモンの影響
- つわりによる体調の変化
女性ホルモンが増加することで、歯周病菌が増えます。
さらに唾液の量も少なくなるため、唾液がお口の中の汚れを洗い流してくれる作用も低下し歯周病菌とむし歯菌が定着しやすくなります。
また、つわりによる体調の波が出てくるので、体調が悪いときは十分に歯磨きができないこともあります。
そのせいで磨き残しが溜まっていくと、歯周病菌とむし歯菌が定着してしまいます。
妊娠性歯肉炎とむし歯の予防対策としては下のようになります。
- 日々の歯磨きを頑張る
- こまめに水分をとる
- 歯科医院でのクリーニング
つわりの影響で体調に波があると思いますので、体調が良いときにより丁寧に磨くと良いでしょう。
つわりの程度によっては歯ブラシをお口の中に入れるだけでも異物感で気持ち悪くなる場合もあるので、その場合はヘッドが小さいブラシを選んで歯磨きしましょう。
また、妊娠中は唾液の量も減りお口の中が乾燥しやすくなります。
お口の中が乾燥すると歯周病菌とむし歯菌が定着しやすくなるので、こまめに水分を摂るようにしてください。
そして、もし体調に余裕があれば歯科医院でクリーニング(歯石取り)をしてもらうことも有効です。
妊娠中の歯科治療での受診は一般的には体調などが安定してくる妊娠中期(16週〜27週)が望ましいとされていますが、クリーニングであれば体調やお腹の大きさをみて妊娠初期や妊娠後期でも行える場合もあります。
まとめ
妊娠中であっても若干の制限はありますが歯科治療は可能です。
簡単なむし歯の治療やクリーニングであれば体調やお腹の大きさをみて妊娠初期や妊娠後期でも行える場合もありますが、一般的には体調などが安定してくる妊娠中期(16週〜27週)が望ましいとされています。
このように妊娠中は治療自体も多少制限があったり、お薬も胎児に影響が少ないものを使用したいということもあるので、妊娠している場合や妊娠している可能性がある場合はその旨を歯科医院の方にお伝えください。
また、妊娠中は女性ホルモンの影響などで妊娠性歯肉炎とむし歯のリスクも上がるので、日頃の口腔ケアにも気をつけてみてください。
もし体調に余裕があれば歯科医院でクリーニング(歯石取り)をしてもらうことも有効なので、その際は歯科医院の方へご連絡してみてください。